社会保障費を削るとどうなるのか

近年「社会保障費を充実させるべき」といった言説はなかなか見られません。「国家予算に占める割合の最大は社会保障費」「少子高齢化を背景に増加の一途」「若者に負担がしわ寄せ」などと評されることがほとんどです。

過去にも何度か言及していますが、具体的に削減案がちらほら出てきています。しかし、本当に削減して良いのでしょうか。

介護業界でいえば、「利用者負担増」によって削減または抑制を行おうとする案が断続的に出されています。

以前に述べましたが、これをすると「利用抑制(介護の利用をやめたり量を減らしたりすること)」が確実に起こります。

しかし考えなければならないのは、介護サービスの利用は「週3回飲みに出かけていたのを節約のために週2回に減らそう」という話とはわけが違うのです。身内のうち誰かが仕事をやめなければならなくなったり、外出やリハビリを受けられる機会が減り心身が不健康になったり、そうした影響が出かねません。

また、事業者側から見ると、利用抑制によって売上が下がれば、人件費の抑制(給与を下げる、人を雇わない)を誘発します。また、業績不振での廃業も増えるでしょう。

ここで考えてみるべきことは、もし日本中で利用抑制が起こり、給与引き下げや廃業が起こった場合、一定の消費は冷え込むだろうということです。社会保障費を下げた分は介護従事者という「消費者」の消費を減らすという形で現れるということです。

介護従事者は給与水準が高くないことで残念ながら有名です。逆転して考えると、介護従事者の所得を増やせばおそらく確実に消費につながります。社会保障費を充実させれば、経済的に良い方向に進むのではないでしょうか。

社会保障費は「年金」「医療」「福祉(介護含む)」で大半となります。年金はそのまま受給者の所得になりますし、医療・介護は人件費率の高い業種になります。つまり、多くは「人に対して支払われる」わけで、それがそのまま消費につながるのであれば、社会保障費を充実させることは経済を温めることになるのではないでしょうか。逆に、社会保障費を削ることは経済を冷やすことになるといえるのではないでしょうか。

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