介護保険制度が始まったころの話

介護保険制度開始は2000年4月1日です。私は1996年から業界に入っているので、制度導入前後の状況をある程度実体験できたことは貴重なことだなと思います。

今でこそ介護事業者は地域にそこそこあるし、介護従事者もずいぶん一般的になりましたが、当時はマイナーな存在でしたし、にもかかわらず従事している人たちとはそれなりに志が高いというか、向上心が高かったように思います。単に「介護」というより、まず「福祉」でありその「いち対象範囲としての介護」というイメージが強かったです。

とはいえ制度導入前後で最も大きく変わったのはやはり量的な面です。

例えば、私が業界に入ったときその自治体にはデイサービスでいうとたった2か所しかなく、3か所目が開設するというタイミングでした。現在では50か所ありますので、とんでもない違いです。

すると「そもそも数か所で足りてたのに、現状が多すぎるのではないか」と感じられるかもしれませんが、そんなことはありません。

当然ですが、当時は非常に数が限られているため単純に利用頻度が制限されていました。必要な方がやっと週1回の利用が可能になったころ(少し前までは隔週)で、週2回利用は不可能でした。そういう状況なので、とにかく「自宅で入浴できない方」が優先、という感じで、認知症で日中不安がある方などわずかに見えましたが、ほとんどが入浴目的での利用でした。

それでも利用できて週1回が限度のわけですから、家族による介護の依存度が圧倒的に大きかったし、そもそも利用できずすべて家族介護で賄うしかないケースや、それが無理なら入院(介護施設数も少なかった)、といった感じでした。

ましてや、現在ではデイサービスの重要な役割であるリハビリテーションや社会的交流といったニーズに対しては、受け止めきるだけの十分なインフラがありませんでした。人間的に暮らすということが、家族状況や経済状況次第である、今思えば大変不十分な状況だったと思います。

介護保険導入はよいことばかりではなかった面もありますが、人間らしく生きるチャンスが増えたという意味で非常に重要であったことは間違いないと思います。

コメントは利用できません。

お問い合わせ・見学随時募集中

お問い合わせ